”FACT”を知ろう(校長より)


世界で300万部の大ベストセラーになった「FACT FULNESS(ファクトフルネス)」(ハンス・ロスリング他著、日経 BP 社)。この本を、「東桜コンピテンシー①ビジョンについて 」の”その5”と”その6”で以前とり上げました。

そこでは、私たちは誤った思い込みで物事を見ていることがあること誤った思い込みを排除し、データを基に世界を正しく見る習慣を身に付けること、を推奨しました。

いま、我々は情報過多の時代に生きています。インターネット等のメディアを通じて多くの情報を獲得することが可能になりましたが、そこにはフェイクニュースが溢れていることも事実です。

また、情報は過多なのにもかかわらず、自分の触れたい情報にしか触れないことが習慣化され、その結果、我々の見方や考え方が偏ってしまう、そんな危険性をはらんでいます。
まずはフラットな視点で・・・「批判的思考力」を身に付けることで・・・物事を的確に捉える判断力を持ちたいものです。

 

話は変わりますが、かつて「1億総中流」という言葉が流行りました。(1970年代です。)
また、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」というタイトルの本が1979年に出版されベストセラーになっています。
そのような時代に生きてきた私にとっては、日本は、世界の中であらゆる面で上位に位置する国であるというイメージがありました。
しかし、気がつけば、どうも世界の先頭を走っているわけではないようだ、という数値が散見されます。

そこで、いくつかの項目について、”日本のいま”を

G7 (フランスの旗 フランスアメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国、イギリスの旗 イギリスドイツの旗 ドイツ日本の旗 日本イタリアの旗 イタリアカナダの旗 カナダ)の中での順位などとともに示してみます。

【世界幸福度ランキング】
世界56位(2021年)、G7最下位。

国連が2021年3月19日に発表した「世界幸福度ランキング」2021年版では、フィンランドが4年連続で1位となり、2位デンマーク、3位スイス、4位アイスランド、5位オランダと続いた。G7諸国では、ドイツ13位、カナダ14位、英国17位、米国19位、フランス21位、イタリア28位。

※「World Happiness Report 2021」による世界幸福度ランキングは、主に次の6つの項目のアンケート調査を中心に選出されています。

1.人口あたりGDP
2.社会的支援(ソーシャルサポート、困ったときに頼ることができる人がいるか)
3.健康寿命
4.人生の選択の自由度
5.寛容かんようさ(過去1カ月の間にチャリティーなど寄付をしたかなど)
6.腐敗の認識(不満、悲しみ、怒りの少なさ、社会、政府の腐敗が蔓延まんえんしていないか)

上位10カ国のうち9カ国が欧州であることから、調査項目の特性、文化的背景や国家の性格など欧州の国が上位に入りやすい傾向があるとの指摘もあります。また、たとえば日本人はアンケート調査で自己評価を低めに申告しがちで、この世界幸福度ランキングがどこまで正確なのか議論の余地もあります。(PRESIDENT Oline 「『世界56位』日本が幸福度ランキングで毎年惨敗する根本原因」より)

【平均賃金(年収)】
日本は約423万円(2018年)でG7最下位。

日本の平均所得金額は551万6千円ですが、平均の551万円以下の割合は62.4%に上っています。これは、平均値(平均所得金額)が、一部の高所得金額に押し上げられてしまうからです。
そこで、中央値の423万円を考えます。中央値は、所得を低いものから高いものへと並べたときの真ん中の値です。したがって、中央値の方がより実態に近い金額といえます。
グラフを見ると、所得が1,000万円以上の世帯は全体の1割程度しかありません。
逆に、所得金額が「100~400万円」の世帯が多くを占めています。その結果、平均所得金額以下の世帯が6割を超えることになっているのです。

フォト

【相対的貧困率】
2018年では、6人に1人が貧困となり、G7でもアメリカに次ぐ2番目の貧困率の高さ。

アメリカ合衆国17.8% 日本15.7% イタリア14.2% カナダ11.8% イギリス11.7% ドイツ9.8% フランス8.5%

【男女平等ランキング】
世界120位(2021年)、G7では断トツの最下位。

ジェンダー格差が少ない1位から5位までは、アイスランド、フィンランド、ノルウェー、ニュージーランド、スウェーデン。その他、ドイツ11位、フランス16位、英国23位、カナダ24位、米国30位、イタリア63位で、日本はG7の中で圧倒的に最下位。韓国は102位、中国は107位で日本より上だった。

同指数では、「ジェンダー間の経済的参加度および機会」「教育達成度」「健康と生存」「政治的エンパワーメント」の4種類の指標を基に格差を算定し、ランキング付けされている。

ランキングは、上位は例年通り北欧諸国。アイスランドは12年連続で首位の座についた。北欧諸国は、評価指標のうち最も差が出やすい「政治的エンパワーメント」で非常に高いスコアを叩き出している。また次に差が出やすい「経済的参加度および機会」でもスコアが高い。一方、「教育達成度」と「健康と生存」では、首位アイスランドから各々92位と65位の日本までの間ではほとんど差が出ていない。

日本の評価は、項目ごとに優劣がはっきりしている。読み書き能力、初等教育(小学校)、出生率の分野では、男女間に不平等は見られないという評価で昨年同様世界1位のランク。

一方、中等教育(中学校・高校)、高等教育(大学・大学院)、労働所得、政治家・経営管理職、教授・専門職、国会議員数では、男女間に差が大きいとの評価で世界ランクがいずれも100位以下。その中でも、最も低いのが国会議員数で140位、立法者、高官、管理職数で139位、閣僚数でも126位とかなり低い。その他の項目でも50位以内に入った項目はゼロ。

経済分野での日本のランクは、賃金格差が83位とこれでも最も高く、労働力参加68位、所得101位といずれもかなり低い。

中国も男女差別がある国のように見えるが、高等教育と教授・専門職では男女平等と評価され世界ランク1位を取得。一方で中等教育、出生率、平均余命では男女差があると評価されており日本とは全く逆の傾向。ちなみに中国の国家議員数ランクは76位と日本よりもかなり高い。

日本では、国会議員、政治家・経営管理職、教授・専門職、高等教育(大学・大学院)等、社会のリーダーシップを発揮すべき分野で、ダイバーシティは評価が著しく低い状態がずっと続いている。

(Sustainable Japan のWebページより)

【自分の将来について明るい希望を持っていますか?という問いに「ある」と答えた人】
日本は61.6%。G7の他の国々が80%、90%台なのに比べると異様に低い。

  • アメリカ 91.1%、スウェーデン 90.8%、イギリス 89.8%、韓国 86.4%、フランス 83.3%、ドイツ 82.4%

内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(2013年度)によれば、米国・英国・フランス・ドイツ・スウェーデン、韓国及び日本の若者(13歳から29歳まで)に対して実施した、将来への希望についてのアンケート結果を比較したところ、「希望がある」又は「どちらかといえば希望がある」と回答した若者の割合は、日本では61.6%と際立って低くなっています。(消費者庁のWebページより)

【世界報道自由度ランキング】
世界67位(2021年)でG7最下位。

国際ジャーナリストNGOの国境なき記者団(RSF)が発表する「世界報道自由度ランキング」は、ジャーナリストや報道機関の活動の自由度を測定したもの。評価手法はジャーナリストによるアンケート定性調査と、各国内でのジャーナリストに対する暴力行為統計の定量調査を組み合わせている。定性調査では、「意見の多様性」「政治・企業・宗教からの独立性」「メディア環境と自己検閲」「報道に関する法制度」「報道に対するルールの透明性」「報道のインフラの質」を測っている。

1位ノルウェー、2位スウェーデン、3位フィンランド、4位デンマーク、5位コスタリカ、6位オランダ、7位ジャマイカ、8位ニュージーランド、9位ポルトガル、10位スイス。

G7諸国では、ドイツ13位、カナダ14位、英国33位、フランス34位、イタリア41位、米国44位、日本67位の順。アジア諸国では、韓国42位、台湾43位、香港80位、インドネシア113位、マレーシア119位、タイ137位、フィリピン138位、ミャンマー140位、カンボジア144位、シンガポール160位、ベトナム175位、中国177位、北朝鮮179位。

(Sustainable Japan のWebページより)

【国政選挙の投票率】
日本は52.7%。G7ではフランスに続いて低い投票率。

若者の投票率は、ドイツが60〜70%、スウェーデンが70〜80%と高くなっています。日本では、2017年の衆院選の20代の投票率は33.85%で年代別では最低。最も高かった60代(72.04%)の半分以下でした。(高校生に限った投票率は決して低くはなく、むしろ高い値になっているはずです。)

 

世界ランキングが示す指標は、調査の方法により、より適切なものになっているかどうか検証が必要なものもあるかもしれませんが、今回見たようにG7最下位の項目が増えている状況があります。
この現状を立て直す必要があるとすれば、何をどのように変えていけばよいのでしょうか。
まずは、投票権を得たら、貴重な1票を投じる行動を放棄しないことを推奨します。
「誰に投票したらいいか、わからないから・・・」を理由にせず「まずは1票を投じること」が大切だと思います。若者が1票を投じれば、若者を対象にした政策が前に進むかもしれません。

以上、日本の未来を担う皆さんに、今後の日本について考えるきっかけにしてほしいと思い掲載しました。