”FACT”を知ろう⑥(校長より)「防衛費」について

ロシアのウクライナ侵攻を受け、防衛費を現在の国内総生産(GDP)比1%程度から2%へ引き上げる案が出ています。

そもそも、日本の防衛費ってどのくらいなのか知っていますか?

そこで、2022年4月9日の東京新聞記事「防衛費増へ自民がGDP比2%案 ウクライナ侵攻受け 達成なら米中に次ぐ規模 平和主義の形骸化に懸念」及び6月3日の東京新聞記事「防衛費倍増に必要な「5兆円」教育や医療に向ければ何ができる? 自民提言受け考えた」をもとに防衛費について調べてみました。

2022年度の防衛費はGDP比1%程度の約5兆4000億円

防衛費を巡っては、1976年に三木武夫内閣が1%枠を超えないとする方針を閣議決定。86年に中曽根康弘内閣が撤廃しましたが、その後も1%程度で推移してきました。安倍政権以降、増額が目立ち、当初予算で2022年度まで8年続けて過去最大を更新。本年度当初予算で約5兆4000億円でした。

日本の防衛費は世界9位 ⇒ GDP比2%にすると世界3位に

ストックホルム国際平和研究所によると、20年、日本の防衛費は世界9位です。GDP比2%にするということはさらに約5兆5000億円を上積みして11兆円ほどにする計算で、世界3位の規模になります。増加分は消費税2%分に相当します。

防衛費倍増に必要な「5兆円」があったら何ができる?

防衛費をGDP比1%程度から2%へ増額するために必要な約5兆円規模の予算があったらどのようなことができるでしょう。
次に、子育て・教育、年金、医療などの政策にどのくらいの予算を必要とするかをまとめました。

【子育て・教育】
大学授業料の無償化※ ・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.8兆円
児童手当の高校までの延長と所得制限撤廃※ ・・・・・・ 1兆円
小・中学校の給食無償化 ・・・・・・・・・・・・・・・ 4386億円
※の大学無償化、児童手当は立憲民主党の試算による。

【年金】
受給者(4051万人)全員に一人12万円を追加で支給 ・・・ 4兆8612億円

【医療】
公的保険医療の自己負担(1~3割)をゼロに ・・・・・ 5兆1837億円

【消費税】
現在10%の税率から、2%を引き下げ ・・・・・・・・・ 4兆3146億円

大学授業料の無償化は年1兆8000億円で実現 児童手当を高校3年まで延長は年1兆円で実現

教育施策に使う場合、立憲民主党の試算によると、大学授業料の無償化は年1兆8000億円で実現。家庭の経済事情で進学を断念せざるを得ない若者の支援につながります。
さらに、児童手当の拡充にも充てられます。支給対象を現在の中学3年までから、高校3年までに延長した上で、親の所得制限を撤廃して一律で1人1万5000円を支払う場合、年1兆円で賄えると立民は試算します。
小・中学校の給食無償化は、末松信介文部科学相の国会答弁によると、年間4386億円で実現します。大学無償化、児童手当の拡充、給食無償化の三つを組み合わせても3兆円台で収まる計算です。

年金…全員に月1万円上乗せ

食料品や電気・ガスなどの急激な値上がりに苦しむ年金生活者のために使うとすれば、4051万人の年金受給権者全員に対し、月1万円、年12万円を上乗せして支給することができる計算となります。
物価高対策では、消費税の減税を求めている政党もありますが、5兆円あれば、税率を10%から8%へと引き下げる2%分の財源になります。食料品などの負担が大きい低所得層ほど減税の効果は大きくなります。

医療…自己負担ほぼゼロに

医療に使う場合はどうでしょう。厚生労働省の資料によると、19年度の医療費のうち、国民の自己負担額は5兆1837億円。5兆円は、自己負担をほぼゼロにできる規模です。